王女の選択
「飲みすぎだ」
ため息と同時に飽きれたような声が頭上から聞こえた。
「ぼーっとしてしまって」
「いつもよく飲むのか」
「こんなに飲んだのは数年ぶりです。ご存知の通り資金巡りが良くありませんから」
ジェラルドははーっともう一度ため息をついたかと思うと、カーラを抱きかかえ歩き出した。カーラはびっくりして足をばたつかせたが落ちたくないならじっとしろと睨みつけられ、身体を固まらせてジェラルドの胸に顔を埋めた。
「酔われていないんですね」
「酔うほど飲まないからな」
ジェラルドの低い声が胸元に当てた耳に響く。
体温が高いジェラルドに抱えられたカーラはその居心地の良さと微かな揺れにあっという間に瞼を落とした。