王女の選択
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ジェラルドは腕の中で気持ちよさそうに眠るカーラを見てまた大きくため息をついた。
もう少し危機感を持つべきではないだろうか。
肉体労働を終えて湯あみをした後、カーラの姿が見えないことにひどく気落ちした自分がいた。ステラに聞くと宴のためのドレスを選んでいたという。
夕食の時間が近づいているのに階下に降りてこないカーラをこれ以上待てないと彼女の部屋に向かっていた。
ジェラルドの周りにいる女性達は煌びやかで着飾ることが当たり前で、装いなどに気を留めたことがなかった。
あの戦場で目にしたカーラは何よりも増して美しく、そして気高かった。ジェラルドにとってカーラがどんな姿であろうとも関係なかった。しかし、着飾ったカーラを想像することが意外と難しく、この眼で見てみたいという気持ちにさせられた。
部屋に行ってみると手櫛を持ったカーラが窓辺に座っていて、それだけでジェラルドの体を熱くさせるのに十分だった。ボリュームのある髪が胸元に降ろされていて、あの髪に口づけし、思いっきり香りを吸い込みたい欲求に駆られ、気づくと髪に顔を埋めていた。
絹のような手触りでありながら、艶めかしく匂い立つカーラの髪はジェラルドの理性をあっけなく飛ばした。鼻先を使って豊かな髪をかき分け、カーラの首元に突き当たった。その素肌に触れたとたん、カーラを味わうことに全神経を注ぎ、その息遣いはジェラルドを夢中にさせるだけだった。
ジェラルドは無我夢中にカーラを味わっていたが、もう耐えられないというように全身を預けてきて初めて、今の状況を考えた。