王女の選択
彼女が欲しい。
だが、今はまだダメだ。
震えながら呼吸を整えると全力でカーラを自身から遠ざけ、夕食だと告げたジェラルドは部屋を出て行った。あの時もう少しでカーラをベッドに運び込む所だった。
しかし今、ぐっすりと眠っているカーラをベッドの傍から見つめ何もしないでいる。
「あと二日。必ずお前を手に入れて見せる」
ジェラルドは小さくつぶやくと、自分へのご褒美とでもいうようにそっとカーラの唇にキスをした。身動き一つせず眠っているカーラに苦笑しながら、静かに部屋のドアを閉めた。
「カーラ殿はおやすみになりましたか?」
ドアの傍にはアルコールの匂いを漂わせたヴィクトーが立っていた。
「ああ。警戒心すらない。お前も飲みすぎるなよ」
「申し訳ありません」
「リュカはどうした?」
「部屋に押し込んできました。ロイド殿はあのままですが奥方が連れて行くでしょう」
「何かわかったことは?」
「特には。ルドルフ殿の奥方についてはいくつか耳にしましたが、新たな情報は何も」
ジェラルドは気にするなというように肩を竦めると、ヴィクトーの肩に手を置いた。
「とにかく明後日の宴までにあらゆる情報を集めてくれ」