王女の選択
「もちろんです。ところで、ジェラルド殿・・・」
ヴィクトーは急に声色を変えるとすっかり酔いから覚めたような眼でジェラルドを見つめ返した。
「ジェラルド殿はカーラ殿との結婚をまだお考えでしょうか」
「なぜだ?」
「今日の午後少し話したところ、カーラ殿はあの鉱山権について何か知っているように思われます。ジルベール殿が話したのかもしれませんが」
「それで?」
「今日もルドルフ殿との面会をしており、宴の準備にしてはかなり深刻な話し合いが行われたと」
「・・・何が言いたい?」
「命を狙ってくるような女性と結婚すべきではありません。結婚すればいつ殺されるか気にしながら一生過ごすことになります」
ジェラルドはすっと目を細めると、自分の命をやるつもりはないと言い放ったが、ヴィクトーは執拗に食い下がった。普段は友人のジェラルドに対し敬意を表しているヴィクトーも苛立たし気にジェラルドの胸元を掴んだ。
「ジェラルド!いい加減にしろ!!確かにカーラ殿は魅力的で、溺れてしまうのも理解できるが命を取ろうとする女を娶るのは危険が大きすぎる!!」
「証拠はあるのか?」
「っ!!今は・・・まだ。だがどうも胸騒ぎがする。残りの二日でできるだけ情報を探るが、考えられるのは毒か剣だ。準備に越したことはない」
「お前のように用意周到な部下がいて助かる」
「ジェラルド!」
ヴィクトーは歯ぎしりをしながらジェラルドを責めたが、ジェラルドは大丈夫だとでもいうように肩を叩いてその場を離れていった。
ルドルフ殿との交渉まであと二日。
その時こそ全てが決まるとジェラルドは確信していた。