王女の選択

「厩舎・・・ですか?」

困惑したカーラの表情を無視して、ヴィクトーは先に進んで行った。厩舎に着くとそこには見慣れない鹿毛の若馬が落ち着きなく前肢で地面を搔いていた。

「この馬は?」

「カーラ殿への贈り物です」

カーラは大きく目を見張ると、ヴィクトーの顔を何度も見返した。

「どういう・・・ことですか?」

「カーラ殿の軍馬は素晴らしい。しかし、見たところあの馬はそれほど若くありませんので、次の軍馬を調教し始めないといけません。まだ六歳馬ですし、軍馬としての素質は十分あります。帳簿を見た限り、向こう数年は馬などにお金を費やすことは不可能でしょう」

「確かにそうですが・・・。何と言っていいのか・・・こんなことをしていただくようなことは何も」

「カーラ」

突然ヴィクトーが敬称抜きで名を呼びびっくりして顔を上げると、カーラの顎に指を添えてきた。突然わけのわからない熱量にカーラは身構えたが、ヴィクトーは逃げないよう、もう片方の手でカーラの腰を捉えた。


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