終わり良ければ、せふれ良し。
「・・・もう絶対煙草の火付けっぱなしで寝ないでね。お湯を沸かしたままどこか行ったらだめだよ・・・それから・・・」
「杏、もう良いから行きなさい」
「・・・うん」
悲しそうな杏がリビングの扉を閉め、玄関で靴を履く。
そんな杏に晋太郎は「挨拶できた?」と声を掛けた。
「うんっ。これで良い!やっとやから。行こう、晋太郎」
「分かった。でも外で煙草吸っていい?杏は先に車の中に乗ってて」
「玄関に灰皿があるからそこで吸っていいよ」
いろんな家族がいて、いろんな家族の形がある。
その人にしか分からない感情やその人にしか気づくことが出来ない痛みや喜びや気づきがある。
人には誰だって、これ以上は踏み込んでほしくない領域として線引きしているところがある。
安易にその中を無理にこじ開けて、心の中をすべて見せてほしいとは言わないけど。
いつか、いつか杏の心の中を俺にも見せていいくらい近づくことができたら。
目を離さずに彼女の真実が知りたいし、ちっぽけな願いや思いでさえも、捨てずに拾い集めてあげたいなと、煙草を吸いながらたそがれる晋太郎であった。
「まだ何にも杏のことを知らないけど、杏の家族の話をいつか本人から聞けたらいいな」
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