終わり良ければ、せふれ良し。
リリーには正直者と化す晋太郎は、とりあえず桔平を紹介することにした。
【刺身:夜遅くにごめん。友達が16日、引っ越しの手伝いに来てくれるそうなんやけど、いる?】
【リリー:全然起きてるよ(^^)ありがとう!重い荷物お願いしたかったんやけど、刺身だけにお願いするのは気が引けて・・・助かる♡】
「ハートやん・・・かわいっ・・・」
『おい、声漏れてんぞ!ってかハートって何?!何の話してんの?!おい!教えて!!』
『桔平うるさいよ』
『てか晋太郎!コントローラーは動かしてーーー、晋太郎くん、お前のターンだよーーー』
『桔平うるさいって』
『音下げな』
今はリリーに返信するしか頭にない晋太郎にはオンラインゲームに集中したい彼らの声はもはや聞こえていない。
【刺身:じゃあ、16日の午前中にお願いするけど予定は大丈夫?仲良い友達やから紹介したかったし、荷解き終わったらみんなでご飯行こう】
【リリー:おっけ!よろしくお願いします。こっちも大事な友達連れて行きます】
【刺身:了解!1人公務員いるよ^^】
【リリー:やっば!!刺身!!大好き!!】
【刺身:当日荷物運ぶから迎えに行くよ^^】
【リリー:え!!ありがとうしか言えない。ごめんね、ありがとう】
【刺身:気にしなくて大丈夫だよ】
【リリー:ありがとうございます。ほんとに感謝しかない。っていうか、今電話できる?大丈夫?】
「え!?電話!??今!?」
『え!!電話?!何?!え!!』
「ちょっとごめん。リリーから電話あるから一旦抜けるわ」
『抜けることないじゃん!オート放置して電話出てきなよ』
「あ、その手が。ありがと風間!行ってきます!すぐ戻る」
『てんぱってんな、晋太郎』


♪~♪~♪


「もしもし!」
『あ、刺身?ごめんね夜遅くに』
「いいよ!友達とゲームしてて。まだ起きてるから大丈夫!」
『あ!ゲームしてたんだ・・・ごめん!』
「ううん!どした?何かあった?」
『一言直接お礼が言いたくて・・・本当にありがとう!頭が上がりません』
「わざわざ電話くれたんや。いいのに」
『ううん!それだけじゃなくて!』
「うん?」
『刺身の本名聞いてないな・・・と思って』
「ああ。そうやった。俺もリリーの本名知りたい」
晋太郎はこのとき、心の中で「本当は会った瞬間からずっと知りたかったけどね!」と思っていた。
『わたし、おかぞえあんずって言います!』
「かわいい名前」
『えへへ~。「木」書いて下に「口」の杏ね』
「俺はかしわだしんたろうって言います。晋太郎の晋は普通の「普」の上の「ちょんちょん」が無いやつです。あとは桃太郎と同じ」
『めっちゃわかりやすいやん。ありがとう』
その日、2人は初めて「刺身」「リリー」から「晋太郎」「杏」と名前で呼ぶ合うようになる。
『引っ越してから、ちゃんと家のルール教えてね』
「ルールとかないよ、過ごしたいように生活してよ」
数分会話した後、電話を切った浮かれ気味の晋太郎が部屋に戻ると「全員退出しました、お疲れ様です」というメッセージと「GAME OVER」とディスプレイに表示されていた。
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