こんなのアイ?




「北川さんに言われたんです…‘妹さん奔放なんですね。お盛んなお年頃なのかしら?夜な夜な違う男性と会っておられるのでは?’と…愛実は何も言いませんが…北川さんに面と向かってそんなこと言われていないでしょうね?」

 返す言葉もない…同じようなこと愛実にも俺にも聞こえるように言っていた。

「まさかと思っていたのですが…言われたんですね…」

 俺が言葉を失ったのを見て克実が低く畳み掛けた。

「もちろん、その場で皆藤さんが北川さんの言葉を否定するなり戒めるなりして下さったとは思いますが…聞いた本人の気分は…えっ?…否定されなかったのですか?」
「…本当に愛実さんに申し訳ないことをしました。状況が把握できていなかっ…」
「ふざけないで下さいっ。その時の状況把握が出来ようが出来てなかろうが愛実の人格を否定するような言葉をそのまま受け入れたんですよ、あなたは愛実の前で」
 
 ああ、その通りだ。

「もう話することはありません。とにかく愛実が会わないと言っているものを会わせるつもりはない。愛実のマンションでもここでも今後このように待たれると迷わず通報しますから控えて下さい」

 そうして俺に背を向けた克実はそのまま

「ちなみに…ブレントには先日私から連絡したんです。見知らぬ方に愛実が声を掛けられたと気にしてましたから…怪しい人ではないと伝えたあと、北川さんの言葉を伝えたんです。すると彼は…愛実が直接言われたとは知らない彼が…知る限りの、聞くに耐えない汚い英語と日本語で北川さんのことを罵っていましたよ。そして、愛実はそんな女じゃないってね」

 そう言ってマンションの中に消えた。
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