こんなのアイ?





「寒くないか?」

 4月半ば、昼夜の寒暖の差がある。

「大丈夫」
「なら、このままクリニックの場所に案内してくれるか?」
「克実のクリニック?」
「ああ…俺は今までの話を聞いて克実と愛実のクリニックだと思うがな」
「…ありがとう、悠衣…こっち」

 愛実が手を繋いだまま歩き出す。

「克実は夕食、何作ってくれたんだ?」
「今日はね、カレー」
「今日はっていつも?」
「ふふっ、克実は忙しくて何も出来なかっただけで家のことは基本的に得意なのよ。料理、洗濯、掃除も全部。だから今月に入って私を迎えに来てはご飯が出来てるって感じよ」
「昨日は?」
「えっと、サーモンのカルパッチョとポテトサラダとか洋食だった。彼は和食好きなのに作るのは苦手かもね。だから私は克実のところで和食を作ることが多いよ」
「俺も愛実の飯食いたい。ずいぶん前だが旨かった」
「ありがとう…あっ、ここ」

 本当に近いな。新築マンションで1階部分に店舗やクリニックか。

「マンションの多い地域だし子どもも多そうだな」
「そうね。克実は前のこの部分が一面全部入居店舗用駐車場なのが気に入ってる。入居者駐車場は地下なんだって」
「なるほどな。体調の悪い子どもは車で連れてくるよな…興味深いな。ここにDiamante Kaiが並ぶことは想像出来ないが子どものクリニックが入っているのは容易に想像出来る」

 それから来た時とは反対回りに俺のマンションへ向かう。

「一緒に歩きながら話するのいいな。前向いてるけど…なんかいい。愛実の事務所通いで癖になった」
「あのときは…本当にありがとう。私もこの時間好き…」
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