こんなのアイ?




 土曜日、悠衣は午前仕事で午後の時間はわからないけど夕方までには来ると連絡があった。週末の家事を済ませ夕食の下準備を整えたあと、すぐ近くのコンビニで悠衣のためにビールを買う。自分の飲まないものまで買ってすごく楽しみに待ってるみたいだよね…楽しみなことは認めるよ、うん。隣にいてくれると心地良いし…えっ?大志?

 マンションに戻るとエントランス外でインターホンを押している大志を見つけ不思議に思う。離婚以来初めて昨日会って、それまで一度も見かけたことなかったのに何故?

「おう、マナ。いなかったのか。今インターホン鳴らしたんだ」

 私に気づいた彼が明るく言うが意味がわからない。

「インターホンって、うち?」
「ははっ、マナ相変わらず可愛いな。お前んとこに決まってるだろ?」
「…何?」
「何でそんな警戒心むき出し?マナの好きな鉄板焼行こうぜ、あの目の前で焼いてくれるとこ」
「行かない」
「何で?男いるのか?俺、いまフリーだから飯行ってもトラブルなしを保障する」
「他の人を誘えば?別れた私を誘うより」
「浮気のこと根に持ってんの?」

 明るい調子のまま何を言ってるんだ、この男は…

「とにかく行きません。ここにも来ないで」
「おいおい、冷たいこと言うなよ」

 と腕を取られ袋の中の缶ビールが音を立てる。

「マナ、ビール飲めるようになったのか?」

 彼が袋に指をかけ覗き込んだ時

「愛実」

 ラフな黒のVネックコットンセーターにチノパン姿の悠衣が足早にこちらに向かって来た。
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