こんなのアイ?





「マナぁ、お前ペラペラと俺のこと男に喋ってんの?ふーん、ちょっと雰囲気変わったんだな」
「俺が愛でてますから」

 愛実のことを知った風に言われ腹が立つ。

「ふーん、どうやって愛でてんの?」
「そんなことどうでもいいから、とにかく帰って…もう来ないで」
「はいはい、わかりましたよ。なんかシラケた…じゃあな、よろしくイチャイチャしてくれ」

 ゲスト用駐車場に向かう男を見て、いつからここにいたんだと思う。

「待ち伏せられたのか?」
「わからないけど、コンビニから帰ってきたらインターホン鳴らしたんだって…車?取ってくる?」
「いい、アイスクリームが溶ける。入ろう」

 部屋に入り互いの袋の中身を見て、相手を思う物ばかりで小さな幸せを感じる。

「うちの冷蔵庫にビールがこんなに入っているのは初めてだ」
「俺が責任持って飲む」
「お願いしまーす。えっと、5時か…」
「愛実、一度隣に座って」

 何となく落ち着きのない彼女を呼ぶと、愛実は俺と微妙な距離をあけてソファーに座る。

「ちょっとこの距離が気に入らないな。もっとこっち」

 愛実の腰に腕を回しグイっと引き寄せ

「あいつに何もされてない?」
「うん、それは大丈夫。ない」
「良かった…気分のいい話ではなかったけど俺が来るまでに何もされてないんだな?」
「うん、されてない」
「時々来るのか?」
「ううん、初めて…昨日たまたまそこの通りで会ったのが離婚以来初めて…で、今日はここに来てびっくりした。ご飯行こうだって…行くわけないのに」
「そうか…もう来ないといいが…」

 あの様子からは来るとも来ないとも言い切れないな。

「愛実、克実に電話できる?話したいんだが」
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