こんなのアイ?





 その夜、悠衣は克実に私と一緒に暮らすと言った。許可してもらうとかではなく、決定事項の報告のような物言いに克実は苦笑しつつ

「愛実が幸せならいい」

 とだけ言う。悠衣は

「もう俺のところ以外に愛実が住むところはいらない。愛実のマンションは賃貸に出すか売ってしまえばいい、相談しよう。ここに置いてる荷物もいらないぞ。全部持って来い」

 と言い切った。

「あははっ、皆藤さん…いや悠衣でいいか…こんな夜に持って来いって…愛実、今は一晩要るものだけ持って行け。明日はここに泊まって週末に荷物をまとめて」
「うん、わかった」
「おいっ、なんで明日ここに泊まる?兄妹揃っておかしなこと言うなよ」
「今夜は悠衣のところで愛実は1泊の泊まりなだけです。週末に引っ越し。ですから当然明日はここ。明日の朝も俺が送って行こうか?」
「結構です。夕方の迎えだけお願いします」

 送迎の分担については相変わらず気が合うようだと思いながら、明日の着替えを持ち

「じゃあ…いってきます、克実。看護師さんの話、明日聞かせてくれる?」
「了解。おやすみ、愛実」

 克実とやり取りしていると

「なんか甘い雰囲気で妬ける」

 悠衣が私の腰を抱いた。面白がった克実が私に手を伸ばし頭を撫でながら

「早く帰って来いよ、待ってる」

 と言うと悠衣は私ごと、さっと踵を返して失礼しますと言いながらドアを出た。ドアの閉まりきる前に克実の笑い声が聞こえ悠衣が舌打ちする。
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