こんなのアイ?




 朝から出社した土曜日。昼過ぎに自宅マンションへ帰る車中から昨日も見かけた愛実を見つける。昨日は反対側車線からメンズのショップバッグを持った彼女を見かけ、なんとなく誘ってみたが断られた。あの警戒心だ、本当に予定があるかどうかも怪しいと思っていたがパンパンの重そうな袋を持っているのでそれなりに予定はあったか?雨がパラついていたので乗せてやろうとクラクションを鳴らすが、彼女は目の前のマンションに駆け込んで行った。

 俺のマンションの隣。ここに住んでいるのか?自室に戻って愛実にメッセージを送ると既読になるが返信はない。返事の催促をするとマンションについては何も答えず誘いはしっかり断ってきた。しかも愛想のない断りだけのメッセージ。綺麗な愛実にツンは似合っているのだろうがデレさせたい気持ちが湧く。しかしその日、その後のメッセージが読まれることはなかった。

 翌日、何度も彼女からのメッセージを確認する自分に笑いが漏れる。そして夕方、初めて電話をかけてみる。出ないかもな…

‘…ぅん…克実…忘れ物…?’

 スマホを通して聞こえる甘えたような無防備な声に妙にそそられるが…カツミと言うのはいただけない。

「今どこ?隣のマンションにいるのか?」
‘…’
「愛実?起きてる?」
‘…はい…起きた…悠衣?’
「ああ、日曜の夜は出掛けないなら今から飯だけ行くぞ。遅くならないし酒も飲まない。下りて来い」

 彼女の思考がはっきりクリアになる前に約束を取りつける。

‘…行かない’
「行く、決定。下りて来いよ。すぐ車つける」
‘…そこいない’
「…どこにいる?」

 いま寝ていたんだよな…ここは家ではない?昨日訪ねていただけ?
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