こんなのアイ?




「迎えに行く。愛実が言わないなら紗綾に聞いて迎えに行くが?」
‘…昨日も食事だったんでしょ?もう今日はよくない?’
「何のことだ?昨日は愛実に無視されてただけだが?寝ぼけてる?」
 
 まだ甘く気だるそうな彼女の声はどれだけセクシーな女に誘われるより破壊力がある。

‘…どういうことかな…うーん…’

 独り言のような呟きと、がさがさとする様子が窺え今まで寝ていたのだろうと想像できる。もう少しこのまったりした声を聞いていたいんだがな…

「寝たまま話してていいぞ。ゆっくり付き合う」
‘…ぅん…ごめんなさい…寝入り端だったの…頭が動いてないかな’
「体調が悪いのではない?」
‘ない’
「この間みたいに肉食う元気はあるか?鍋でもいいぞ。しゃぶしゃぶ、すき焼き…」
‘…悠衣’

 今の…ため息まじりか吐息まじりで名前を呼ぶのは反則だぞ、愛実。

「ん?」
‘食事に行くのは決定なのね?’
「ああ、そうだ」
‘…S駅が最寄り駅なんだけど’
「何分かかる?駅まで20分とかかかるなら家まで迎えに行った方がいいだろ?」
‘大丈夫、5分かからないくらい’
「じゃあロータリーで、6時な」 

 反論や異議申し立てを聞くまいと、もっと話したい気持ちを抑え通話をきる。もう5時30分だ。寝ていた愛実にすれば時間がないだろう。ふっ、寝起きの無防備なまま来ればいい。
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