こんなのアイ?
悠衣からは金曜日のメッセージ以降3日連続で連絡があったことになる。一度食事に行ってこれ以上誘われても行かないときちんと伝えよう。
時計を見ると…あと30分しかないじゃないか。自分の格好を確認すると克実のところから車で帰ってきた格好のままだ。オーバーサイズのざっくりセーターとスキニーパンツ…どちらも黒。いいや、このままで。寝て乱れた髪だけは整え、薄手のテラコッタ色のコートを羽織るとバックを手に部屋を出た。
ロータリーに着く前に、歩く私のすぐ前で1台の車が止まる。助手席のウインドウを下げ悠衣が
「乗って」
と運転席から言うので黒いドアを開けて助手席に乗り込んだ。
「ちょうどだったな」
「…こんばんは」
「ははっ、こんばんは。さっき話してたけどな。目覚めたか?」
「おかげさまで…モーニングコールじゃないか…イブニングコールで起こされた」
ちょっと嫌みを言ったつもりが、可愛い…ってどういうことかな?
「食事は何がいい?何でもいいは無し」
「…」
悠衣、やりにくい相手だな。
「選択肢はもらえる?」
「ちょっと待ってな」
彼は走り出していた車を一旦止めてこちらを向いた。
「焼き肉、すき焼き、しゃぶしゃぶ、寿司…」
「ごめん、やっぱりファミレスか回るお寿司でお願いします」
高級そうなところはいらない。わがままと思われればそれもいい。価値観が違うと思われるのもありだな。