こんなのアイ?




 まだ人も多くはない温室内をゆっくり歩く。天井がとても高い空間は温室とは思えないほど開放感のある空間だ。

「花も咲いてるけど、グリーンだけで美しいね」
「ああ、グリーンだけで数えきれないほどの色の種類に見えるな」
「濃淡と…光りかたとか質感っていうの?目にも心にも優しいね、ここは」

 室内だが森林浴でもするかのように空気を吸い込む愛実の腕からコートを取り手を繋ぐ。

「…っな」
「デートだろ?」

 引こうとした手をきゅっと握り、その手の甲に唇を落とすと愛実はパカッっと口を開け空気だけを吐き出す。

「ん?唇が良かったか?また後でな」

 今度は赤くなりうつ向く愛実の頭に唇を落とすと

「…なの?」
「なんて?」
「悠衣ってキス好きなの?」
「ふっ…愛実には好きだと思うぞ…まだしてないけどな」
「えぇ…っ」

 何か言いたそうに顔を上げた愛実に

「うん?こうだろ…キスは…」

 顎に人差し指をかけ上を向かせると唇を重ねる。逃げる唇を追いかけ、唇で彼女の唇の感触を確かめるよう軽く食むと、その唇を舌でなぞりそっと離れた。顔だけでなく首も耳も色づかせた彼女の頭を抱きよせ耳元で囁いた。

「これは一応キス…一応な…大人のキスはこんなもんじゃないだろ?」
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