こんなのアイ?
「…そんなの知らないっ」
俺の腕をすり抜けて歩き出す後ろ姿も綺麗だと一瞬見惚れ2、3歩で追い付くと
「知らないなら教えてやる…手取り足取り」
「もお…教えていらないから…それにキスに手も足もいらないっ」
可愛くぷりぷり話す愛実の腹に後ろから腕を回し
「教え甲斐がありそうだ…足もこう回して絡めて…」
腕のように足も後ろから絡めようと右足を浮かせると愛実は俺の左足を踏んだ。
「ぃって…」
全く痛くないが大袈裟に言ってやる。だが彼女は騙されることなくすたすたと出口へ向かってしまった。そして温室を1歩出て寒さに身を竦めた愛実にコートをかけてやると
「ありがとう、悠衣」
彼女は照れくさそうに俺を見上げながら言う。ああ…舌も腕も足も何もかも絡め取りたい…その衝動を抑えるように愛実の手を強く握ると、彼女は戸惑いを見せたあとそっと軽く俺の手を握り返した。
そこから海の見える場所まで移動しランチにする。
「悠衣、少なくない?」
「愛実のもらうからいい。愛実それ半分ほどにしておけ」
「…?」
「今からタルトのうまいところに連れてってやる。ここから歩いてすぐ」
「ほんと?」
「ほんと」
「嬉しいっ…悠衣、私のお腹の中見えてるんだね…」
「ああ、肉バルで肉食ってる時から観察済み」
愛実は両手で自分の腹を隠し押さえて俺を睨みながら笑っている。
「ふっ、その顔もそそる」
「なっ…」
今度は赤くなって頬を押さえる愛実を席に残し店のドアに向かうと、後ろから追いかけてくる気配を感じ、自分でも甘い笑いが漏れるのを感じた。