こんなのアイ?
「悠衣、たくさんお店知ってるのね。この間もらったチーズタルトもすごく美味しかった」
「あそこは会社の近くで人が並んでいるのを見たことがあった。今日は愛実をデートに誘った手前、仕事そっちのけで調べたところ」
海沿いを歩きながら話していると彼女のバッグから短い電子音が聞こえた。
「どうぞ」
「うん、ごめんなさい」
バッグのスマホを手にした愛実が、紗綾…と呟く。結婚式に行ってる紗綾が?
「紗綾か?何て?」
何も知らない振りをして聞いてみると、まだ見ていなかったメッセージを愛実が開いた。
「あっ…」
彼女の声に画面を覗くと新郎新婦を囲んだ着飾った紗綾たちの姿が見える。その間も数回スマホが震える。
「…友達の結婚式…時間的に今はもう披露宴かな…みんなが写真を送ってくれているんだね。ピコピコ、ごめんね…今は音消して…よし、あとでゆっくり見るよ」
「愛実は行かなかった?」
「うん…」
「なんで?これだけ連絡が入るくらい親しい友達だろ?」
吐き出せよ…愛実。彼女は遠く海を見ているのか空を見ているのかわからない視線を投げ言葉を発した。
「悠衣…この前聞いたでしょ?私…離婚二度もしてるの…結婚式に参列するのは縁起が悪いから遠慮してってことだった。ご両親からすれば当然よね」
「やっぱりバカマナだ」
俺は両手で彼女をぎゅっと包み込むと
「当然なわけない…祝う気持ちのあるやつが揃う場だろ…離婚は関係あるものかっ」
落ち着いて抱きしめてやるはずが言葉にすると吐き出すように音にしてしまった。