こんなのアイ?




「ふふっ…ありがとう。でもね、考えてみて悠衣…反対の立場なら私の両親が同じように言ったかもしれないでしょ?だから腹を立てることではないと思うの」

 一回りも年上の男に優しく諭すように言う愛実をさらに強く抱きしめ

「そうだな…お前はそう思っていたらいい。俺が腹立てておいてやる」

 と頭の上から告げ、もう一言続けた。

「その写真、一人で見るな。帰って夜一人で見るなんて絶対にダメだ。見るなら俺と一緒に見ろ」
「…」
「そんなの一人で見てへこんでるところを想像するだけでムカつく」
「…優しいんだね」
「愛実限定」
「…タルト食べながら見ようかな…?」
「そうしろ。見ても見なくてもいいくらいだが見るんだろ?適当に見てやったらいいんだ。どうせ似たような写真が送られてきてる」
「ふふっ、じゃあ行く?」
「…あと1分だけこのまま腕の中にいろ」

 もう彼女は何も言わず俺の腕の中にいた。30秒だったかもしれない50秒だったかもしれない…ただ彼女の体温をコート越しに感じるくらい、俺の体温も伝わるくらいに抱きしめたかった。一人じゃないぞ、と…

 調べていたケーキ屋併設のカフェはほんの少し待つと席に着けた。海が見える横並びの席で愛実はメニューを真剣に見つめる。あまりに真剣な様子に吹き出しそうになりながら

「3つ選べ」
「えっ、いいの?」
「ああ、ここが愛実の今日のメインイベントだろ?くっくっ…」
「笑われてもいいくらい…どれも美味しそう」

 時間をかけて選ぶ彼女の横顔を飽きずに眺めた。
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