こんなのアイ?




「…自分で食べるよ…恥ずかしぃ…」

 とひそひそと言う愛実に

「今日は窓向いて座ってるだろ。誰も見てない。ほら…あーんは?」

 自分でも恥ずかしいと思うが彼女を前にすると出てくるのだから仕方ない。愛実も仕方ない風ではあったが大きく口をあけパクっと音がしそうに閉じた…と…両手で慌てて口を押さえ

「やだ…歩いてる人と目が合った…ぁ…美味しい」

 モグモグしながら頬を緩める。3種類とも一口ずつ口に入れてやり満足した俺は自分も食べてみた。

「うまいな…このナッツの俺もらう」
「うん、珈琲に合うね」

 ここでゆっくり話をしていると外はすぐに夕方の気配を帯びてくる。真っ暗になる前に海へ迫り出す観覧車に乗ることにし海沿いを再び歩くと

「ねぇ…もしかして結婚式のこと知ってた?紗綾に聞いてた?」
「ん?さぁ?デートしたかっただけだが?結婚式がなくても誘うぞ。明日もデートするか?このまま明日まで一緒にいるのもありだな」
「…無しです…でも結婚式のことは…ありがと」
「ん、礼は腕組んでくれればいい」

 そう言って愛実のいる左側の肘を軽く曲げてやると彼女は控えめに手を掛けた。やっぱり可愛いな…右手で愛実の手を引っ張り深く腕を掛けさせると彼女の歩幅に合わせて歩き出す。
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