夢見るユメに僕は夢中


……穏やかなはずなのに、最近は、ほんの一瞬でいいからこっちを見てくれないかって、そういうことを考えてる。


視線が向けられるのをストレスに感じているはずなのに、この矛盾は何なのだろう。




チラ、と彼女の手元を見た。

……今日も"ハギワラユージ"。


自前なのか、いつも読んでいる本は決まってハギワラユージのもの。

聞いたこともない名前。



テーブルの上に突っ伏して、下から彼女を見上げてみる。


白い肌と長い睫毛が印象的だった。

上履きの色は同じだから、俺と同い年の1年生。


名前も知らない、どこのクラスなのかも分からない。

知らないことが多すぎる彼女のことが、気になって仕方がない。



一瞬でいいからこっちを見て。
俺を見て。





「ハギワラユージが好きなの?」





思ったより緊張してたのか、少し声が枯れてた。

そのことを気付かれないように「いつもその人の本読んでるでしょ」と、続けて聞く。

< 9 / 17 >

この作品をシェア

pagetop