夢見るユメに僕は夢中
……穏やかなはずなのに、最近は、ほんの一瞬でいいからこっちを見てくれないかって、そういうことを考えてる。
視線が向けられるのをストレスに感じているはずなのに、この矛盾は何なのだろう。
チラ、と彼女の手元を見た。
……今日も"ハギワラユージ"。
自前なのか、いつも読んでいる本は決まってハギワラユージのもの。
聞いたこともない名前。
テーブルの上に突っ伏して、下から彼女を見上げてみる。
白い肌と長い睫毛が印象的だった。
上履きの色は同じだから、俺と同い年の1年生。
名前も知らない、どこのクラスなのかも分からない。
知らないことが多すぎる彼女のことが、気になって仕方がない。
一瞬でいいからこっちを見て。
俺を見て。
「ハギワラユージが好きなの?」
思ったより緊張してたのか、少し声が枯れてた。
そのことを気付かれないように「いつもその人の本読んでるでしょ」と、続けて聞く。