空の表紙 −天上のエクレシア−
「やアやアやア!
よく来てくれたねルビナ君!!
さあこちらへ来てくれたまえよ!」
花束を抱えたままの
ルビナの肩を強引に抱き
早足で小豆色の絨毯を
満面の笑顔で闊歩するハデな貴族
「あのっ、
うちは花を届けに来ただけ
なんですけどっ…」
ルビナが裏門に馬車を停めた途端、
真っ白な羽根帽子と
マントを翻し現れた男
マドゥー家嫡男
ピッキーノ・F・マドゥーⅢ世
数か月前
城への讃礼に
馬車でやって来た時に脱輪し
修理が出来る者か
代わりは無いかと
召使が訪ねて来た時
ギン親方が修理をかって出た時に
初めて出会った
それからと言うもの
なにかと花を
注文してくれるのはいいが
毎回ルビナを指名してくる
いつもはうまく外で
門番の人に渡して済んでいたが
今回はピッキーノ自らの御出迎えだ
相手は貴族
機嫌を損ねたら
親方はもちろん、
周りの人にも迷惑をかけるかもしれない
逃げられ無かった。
この一帯を支配する
マドゥー家は
現王家と繋りが強いらしく
陸路の貿易権利を一手に担っている
ピッキーノも管理の一部を
引き受けているらしが
隙を見ては楽団を呼び宴を開き
自家の誉れを友人知人に語るのを好んだ