空の表紙 −天上のエクレシア−


皆が今居るのは
薄曇る荒野山の天辺
シィラの館

何匹もの翼竜が飛び交い
大陸を越えて魔術師達の手紙を
運んでいる

全ての魔術師の手紙は
一旦ここへ全て集められ
大魔女シィラの検閲を受け
各地へ運ばれるのだ

忙しく立ち回る集配人は
全部シィラが土くれから創った
ゴーレム
『無駄口叩かないしよく働くし
秘密も漏らさないからねー』
とはシィラの談

サリュは不思議そうに
手紙を棚に入れるゴーレムの後を
ずっと付いて回っている


そんな中
オデッセイの『自分が垂らした』発言に
皆驚愕している中、彼は言葉を続ける

「よっこいしょ。結局さ。

向こうも必要な物集めてるけど
あの場で見た物しか解らんワケでしょ

だから今、向こうは
『石を手に入れてこっちも騙せた』って事で
有頂天なってるだろうし、そんな時
『もう一個石が必要かも』
ってなったらそれが嘘かもしれなくても慌てるでしょ
ピッキーノがクローバたんに頼んで
ここの板覗いてるの知ってるしね」


あの騒動の中
とっさに持って出た玉の入った箱を
ノアールはギョッとして
オデッセイに指し示す

「贋物?!これ?!」

「うん
遺跡が調査され始めてから
ずっと様子を見てた
玉は研究施設に運ばれて
たいそうに保管はしてあったけど

…アクアスから奪った後の追っ手
闇兵も混ざってはいたんだけど
なーんか、しつこさが足りなかったんだよね

それで気になって
サリュに会ったあの日
コッソリ塔の側で腕輪外して
玉を持ってみた」


「…馬鹿者」
ガラが呟く

「だって
『異形化した者が持った時に
それは紅く反応する』
位しか
今はそれが本物か、確かめる術が無いでしょ

追っ手にしつこさが足りなかった
とは言ったけど
さっき襲って来たみたいなのが
相当数は居たよ
だからちょっと頑張っちゃって
かなり異化してたし
ちょうどいいやって思って」


ジークが言う

「…アクアスに持たせたのも
疑問ではあった」

「ジークを
おびき寄せる為じゃないかな
フリートはジークと同期で
ジークの性格、
良く知ってるだろうしね」



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