空の表紙 −天上のエクレシア−
「…ここはね
あんたらを異形化した力に
似たもんなんだよ
遺跡奥の神殿
私がよく『アレ』と呼んでいる−
あそこにあったそれは
……デカい『本』なんだ
閉めた扉と言うは
『表紙』の事さ。」
皆、体を正して聞き入る
「本…?」
「ああ
うちの一族はその本を守る為に
代々存在して来た。
『青い石』は本の鍵を開ける為の物
光はそれが開いた合図さ
私は唄で『目次』を読み
『どの世界に遊ぶか』選ばせ
そして
『その世界に入った者を
そこから戻す』為にあるんだ
…青の王と親しくなった父は
本を見せてね
二人で東洋の戦乱時代を選んで入り
よく遊んでいたよ
朝入ったら夕方には呼び戻す
それが『掟』
しかしそうすると、
その決まりを解ってる父でさえ
私にぶちぶち文句を言ったもんさ」
「じゃ…じゃあよ。
あの日も兄王とピッキーノは」
「ああ
側には父と、私が居た
族長が本の中について行く
決まりだからね
それと、
後からやって来た
弟王の数人の護衛兵が居た
…しかしありゃ、護衛と見せかけて
『本』の構造を調べて居た様だ
『扉』を見るなり赤い髪の男が
いきなり座り込んで写生を始めてね
うちの民が慌てて制止していた
それで一回揉めてね
青の王が深く謝罪して
その時はそれで終わったんだよ」
ジークは黙って
庭を見つめる
「なあ、ばーさん
光はその『扉』が
開いた合図なんだろ?
それで光受けただけで異形化?!」
「…だから一度目は
意識一瞬飛ぶだけで何とも無かったろ」
「ああ…そして」
「うん。オレなんかも
何事かって奥走ったんだよね」
「んで
虫捕りしに来た俺達が居た…と。
… 一体何が起こったんだ?」
「あの時さー。ガラは、
弟が扉を開けたって言ったよね…。
ピッキーノは何をしたの…?」
「…『本』は神殿の座の宙を
くるくると回っている
それを取りアイツは
『背表紙』から開いたんだ…」