空の表紙 −天上のエクレシア−
「…本の目次には
かなり多くの項目がある。
さっき言った『東洋の戦乱世界』や
『地竜が支配する世界』
ここみたいな
『平和な日常の続く世界』…。」
外は薄暗くなり、
庭先には星虫に似た光が舞い始めた
「…ここは
シィラの想い出を魔法石に記憶させて
世界を映し出してるんだ」
いつの間にか
ジークは『ユカタ』を持って来て
身に纏っていた
細い紐でただ縛って止めている
ガラは慌てて諭す
「ひ。ジーク それじゃ死人だよ
紐もそれじゃなくて
黒くて太い『オビ』があったろ」
「…これか?」
「そうだ お嬢ちゃんもおいで
着せたげるよ」
「うん。」
たたた。とサリュは走り寄って来て
ペタンと横に座った
二人並び
引き出しから幾つか、ユカタを出して
どれがいいか相談している
オデッセイが口を開いた
「…ねえ…オレ思ったんだけど
…もしかして本に入ると…
時空を跳べるのか?
その時代に行って帰ってこられる
装置みたいなモンか?!」
「…さあてねえ。
そうかもしれないし
ちょっとここ持っててくれるかい?
…いいよ。手降ろして
今度は後ろいいかい?
よっと。
……ここみたいに
ニセモノかもしれない
私は入った事が無いから解らないね
はい出来たよ!
…あらかわいい!『アサガオ姫』だ」
オビを最後にぱちんと叩かれ
サリュは満足そうに笑って縁側に立つ
先に着て縁側に座っていたジークが
それを見て『ほう』とひと声
ノアールが口を開く
「後ろからピッキーノは本開けたんだろ…?
一番後ろの頁は
何か恐ろしい世界なのか?!
そう…黙示教典とか破滅の世界みたいな…」
「いいや」