空の表紙 −天上のエクレシア−
「いいや。って…。」
「何も書いてないんだよ」
「なにも…って。」
「『本の中に長期滞在する事は
命を削る故にならぬ
そして、決して背表紙から
開けてはならない』
そう、一族には伝えられている
これは
中に入る前の『掟』
誓いをたてなければならず
破ればその者を
二度と本には近付かせない
そして続くこれは、
長と数人の者しか知らない一節で
…『空白の頁が開かれし時
出ずる光は、
照らされた者の思念を黄泉取る。
そして願いは叶う。
その者の一番望む願いを。
しかし願いは強固で無ければならない。
でなければ肉体は墨の塊となり
無に帰すであろう。』」
ジークは空を見つめた
オデッセイが呟く
「…空白のページは『可能性』
…だからどんな願いも叶う…」
ガラが花火を、縁側の二人に持って行く
なかなか開かない袋を
サリュが口で噛み切ろうとするが
横からジークがそれを取り
ぱん、と簡単に開けた
サリュが火を着けた花火を
ぐるぐる回す
ガラがその光を目で追いながら問う
「…お前らは…
一体何を望んでいたんだ…?」