空の表紙 −天上のエクレシア−


―――――午後のメイジ通り



「あ〜…。
似合うかな これ 」

早朝
アクアスに届けられた新しい鎧は
薄い水色に輝いていた

かなり軽くて、動きやすい

お使いの人に告げられた
『城へいらっしゃい』と言う
フリート隊長の伝言


ずっと灰色の煤けた鎧で
外門守りの兵士だったから
正直お城の中へ入るのは初めて

お使いの人は
『城への出向は昼からでいい』
と言うので
緊張していたのも手伝って
自然とルビナの店に足が向く

――自慢したい
そんな気持ちも充分あった




商店街に入ると
買い物の客でいっぱい
そんな中でも、
くるくると良く働く
ルビナの赤い巻き毛は
とても良く目立った

今日は頭のてっぺんに
エプロンと同じ色、
白いリボンをつけている
そんな姿は、店にたっていて初めてだ



―声はかけない。
人波に立って、わざと少し
咳込んでみる



……気がつかない
鈍いからな…。

何回かやっていたら、喉が詰まって
本格的に咳込んでしまった



「…あれ。アクアス
なんか鎧新しいねえ
似合ってるねー」

やっと気が付いたルビナは
店先に立ち、幼馴染みの雄姿を褒める



…しかし

なんだか本気が入っていない
アクアスが欲しかった
ルビナのリアクションは
こんな物では無かったのだ


『うっひょおおおお!!?
すごいじゃんアクアス!!
かっこえー!!』とか
それによって御近所さんも寄って来て
もうなんか街の英雄みたいな
そんな勢いある物が返って来ると
期待していたのだが……



ルビナは意を決した様に
キョロキョロと周りを見回してから
アクアスを店の奥に引き込んだ



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