空の表紙 −天上のエクレシア−
――周りはいつも硝煙臭かったし
逃げて走っていた記憶しか無い

気が付けば兄らしい人と
二人だけだったから
それが普通なんだと思っていた


ある時荒野で
巡礼の一団にあった
何かと思って付いて行ったら
いつの間に兄とはぐれていた
食えないうちはそこにいた。

修行の一環で柔術と
良く面倒を見てくれた女に
法術を教わった

いつかそこを抜けて夜の街にいた
やっかい事を起こして逃げ回った時期もあった

その追手から身を隠す為の策が『坊主』
青の王に拾われていなかったら今何をしていたか判らない



―あれは南の避暑地
貴族とスラムと
青い空と白い建物。
はっきり分かれたコントラストの街

この時期は
『正統教会っぽい』服を着て
海岸を回ればそこそこ稼げる

最近は世情もかなり
景気が良くなって来たので
実入りが期待出来るとホクホクしていたのだが…



「 気持ち…悪い」

…食い物が合わなかったのか

それとも夕べ、
ちょいとこの辺のチンピラ騙して
ウワマエをハネようとしてバレて
しこたま殴られたせいなのか…
(薬屋無かったかな…。


懐を探るが財布が無い
てか服すら着てない…?
「…そっか…。
身ぐるみ剥されたんだ…俺。」

建物の影に腰を降ろしたのまでは覚えている。――




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