空の表紙 −天上のエクレシア−


クスリと笑うルビナを見て
ピッキーノが顔を覗き込む


「風邪かい?!」

「いえ。
クシャミじゃなくて笑っ
…あわわわ!えっと!」


「よく見れば
服がぬれてるじゃあないか!」


「あ お花に沢山水吸わせて来たので…」



ピッキーノは先程のポーズで
また合図を出す


どこからかまた
別のメイドが数人やって来た


「君達!!非常事態だ!!
このお嬢さんにドレスを!
色は僕好みの白でね!」


「え えええ?!」


メイド達は叫ぶルビナを
抱え上げたまま、
広い廊下の奥へ音も立てずに消えて行った








「…紅い髪に、
白がすっきりとお映えになります事!」

天井まで届く鏡の前で
唖然とするルビナの横には
ドレスアップ後の髪結をし始めた
老メイドが微笑んでいた


「あの、
テキトーでいいですよ!
おばあちゃんだって
お仕事あるんだし!」


「ほほほ、今がそうでございますよ。
さ、顎をお引きになって下さいな。」


「うが!」


「ごめんなさいね…。」


「はひ?だいじょぶです
痛くないですよ!」


白いライラックの小花が
模されたピンを髪に挿しながら
老メイドが言う


「……ぼっちゃまは
こういう方法しか
知らないんでございますよ

貴族の方々は御自分の子供を
乳母に御預けになります
けれど、ご時世が御時世でしたでしょ
召使達も次々変わってしまって…。

御一人で居られる事が多かった幼少期の
反動とでも申しましょうか

こうやって贅を尽くして
日々興じられて居られるんです…。」


ルビナは
固まって行く頭の重さが気になって
話半分だったが
強引な主人の行いを
謝っているのは良く解った


「さ。お綺麗でございますよ」


後ろから現れた
二人の若いメイドが
薄いヴェールをルビナの肩に掛ける


「こちらから御庭の方へ。」




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