空の表紙 −天上のエクレシア−




―――――どこからか
太鼓や笛の音が
微かに風に乗ってやって来る


ノアールがしきりと気にするので
皆でそこに向かう事にした

街の明るいネオンや
看板の掲げられた高い建物の隙間に
隠れる様に、小さな森と神社があった


いざなう様
両脇に掲げられた赤い提灯

ジャラジャラと鐘をならし祈る人々
幾つもの出店

人々の波に合わせる様に歩く五人


ジークは酒を飲みつつ
神楽に魅入る

サリュは林檎飴を
『綺麗』と言って買ったが
いっこうに食べないので
垂れて来た飴に手がべとべとになって
慌てている


ノアールは何やら座り込んで
説明を聞いた後
固めた菓子で出来た型板を
針で必死に
周りの客と共に削って競っている

『のああ!また割れた』と叫び
頭に手拭いを巻いた店主に
また新しいのを出させて
再チャレンジし始めた




「―――ここは、ヤバいね…」


少し人の波から外れた
小さな祠の横に座り
甚平を着たオデッセイは
酒を呑みながら呟く




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