空の表紙 −天上のエクレシア−
「どうした?」
―――ガラがオデッセイに問う
「……なんかさあ
変な気分になって来たんだもん
…元々オレらはあそこに住んでてさー。
寡黙だけど面白い兄貴
ちょっと天然の妹が居て
生意気だけど可愛い弟がいてさ…。
怖いけど面倒見のいい母さんと
毎日ずーっと
一緒に居た様な気になって来た…」
「怖いが余計だ。」と
ガラは笑い
普段は決して開ける事の無い
ケープの隙間を少し開けて
深く息を吸っている
「……ここはそういう場所だからね
たまに来て楽しんで
元気を貰ってまた帰る
『本』の中から
『帰りたくない』と駄々を捏ねる人も
たまに居てね
だから朝に入ったら
夕方には強制で出すんだよ」
「…なるほどね。納得。
…あんねーオレ…あん時ねー
叫ばれちゃったんだ」
「ん?」
「…オレ
あの洞窟から
皆の所行かなかったでしょ。
あん時は冷静に行動してた
つもりなんだけど
今思えば相当焦ったんだと思う
姿が戻らないまんま
当時一緒に住んでた女のとこ
行ったんだ
…そしたら叫ばれて
通報されちった
憲兵が来た時には姿も戻ってて
…上手く話して帰ってもらったけど。
…どっかで
『こいつなら俺がどんなんなっても
絶対好きだろう』とかさ
信じ込んでた。
…馬鹿だよね」
「ひひ。
…私や誰かが
あの時先に叫んどいてやりゃ
よかったか。」
「あはは そうだねー
…ねえ。
ガラはさ…
元々からその声じゃ
ないんだろ…?」