空の表紙 −天上のエクレシア−


月あかりに二つの影


――しばらく森を進むと
広場に、白い横長の建物が見えて来た


「…こんなトコに建物あったんだ…」

「普段は目眩ましをかけてます。
こちらへ」


―――どうも寄宿舎の様だ



廊下を隔てた部屋に
小さな子供達が眠っており驚愕する

(流刑島に子供!?


見透かす様にキャサラが言う

「皆『過ぎたる子供』です。
聞いた事がおありでしょう。

魔術の知識も無いうちから
強い力を持つ。

大抵は十になるかならないかで
消えますが。
それまで収容し
保護する場所がここ。

…本来、私はこちらの仕事なんです」




「…その大事な子供を
俺に見せていいのか」

「私はここは長いですから。
冤罪だとかは、すぐ解ります
子供相手を毎日してますとね
嘘はすぐ判る様になりますし」


「…ごめん。キャサラ。
俺あなたの事、優しいけど、
なにか
冷たい空気だなとか思ってたよ…。」

「くす。
『先生』ですから。
厳しい所もありますよ。」


「…こちらです
最近やって来た少年なのですが
かなりの力の持ち主で…」




――奥の扉を開くと
小さなベットの中で
子供が一人泣いている



「…何があったの?」


兎がそう問うと、
子供は顔を上げる

少しだけ、ギョッとした


― 子供とは思えぬ空気 ―


青い瞳、金色の巻き毛

それが涙を溜めながらも
真っ直ぐに白兎を見つめ返す




< 126 / 227 >

この作品をシェア

pagetop