空の表紙 −天上のエクレシア−
――自分は、
草原に立っている。
気持ちの良い、淋しい風が吹く
その真ん中に
一本道
分かれ道が沢山あるが
全部の道はそこへ集まっている
その一本道の先には
森があってとても薄暗い
―でも
森の手前の空中に、
『本』がくるくると浮かんでいた
まるで
青空を切り取って張り付けた様な装丁
――――いつの間にか
横に少年が立っていて
『本』を指さしている
遠くの
そこここにも
子供達が立っていて
皆こちらを見ている
「ボクらには取れないんだ。
背が届かなくって…。
お坊さん背が高いから、
取れるかと思って連れて来たの。」
手を伸ばす
だが『本』を護る様に、
見えない壁があって触れない
白兎は首を振る
「やっぱり『唄』がいるんだ。」
「……唄?」
「うん。…ほらよく聞いて。
本の中からずっと
呼び声が微かに聞こえてるの
誰かの声……ううん
皆の声かもしれない
でも今は
『唄を貰って』眠ってるみたいになって
何も答えてはくれないんだ
「…うーむ。
今流行りの『クミ・コーダー』でも
いいんだろうか…。
ウサタン得意なんだけども」
「?」
「あ。いやいや。
…そう聞いたからには
君らは
もう歌ってみたりはしたんでしょ?」
「うん。」
他の子供達も
それぞれコクリと頷いている
「聞こえないみたい。
だから、
聞こえる様に歌える人がいるのかなって
言ってたんだけど、
今壁があるってわかった
きっとそれを
取ってあげなきゃいけないんだ」
――――強い風が体を押した