空の表紙 −天上のエクレシア−


促されて
怖ず怖ずと進み出た

テラスの先には
午後の陽射しに光る、緑の木々


噴水の向こうで
さんざめく人々の声がする


それに混じって

…ピンと張った竪琴の音が
風に乗って届いて来る。

―どこか昔に聴いた事のある様な、
懐かしく物哀しい旋律―。



「痛っ…!」

(なんだ?)
突然胸に
刺す様な痛みを感じて
慌てて腕でさぐる
ピンでも外れて服の中に落ちたのか

その場でピョンピョンと飛んで見るが何も落ちて来ない




− 唄が聞こえて来た




…哀しみに回るのは、ただ
土で出来た小鳥だけ…

水に描いた絵を持って
貴女と共に結ぼう…

そして炎は燃えるよ
氷の群青の中で……♪




吟遊詩人が好んで唄う
流行りの恋の流行歌なのか



その歌に導かれ、その群れの中に
近付いて行こうとしたのは
ルビナだけでは無かった




正装し
手に小さな包みを携えたアクアスも
瞳を見開いて唄に聞き入っていた



「この歌…
ジークも居なくなる前歌ってた…」




< 13 / 227 >

この作品をシェア

pagetop