空の表紙 −天上のエクレシア−
促されて
怖ず怖ずと進み出た
テラスの先には
午後の陽射しに光る、緑の木々
噴水の向こうで
さんざめく人々の声がする
それに混じって
…ピンと張った竪琴の音が
風に乗って届いて来る。
―どこか昔に聴いた事のある様な、
懐かしく物哀しい旋律―。
「痛っ…!」
(なんだ?)
突然胸に
刺す様な痛みを感じて
慌てて腕でさぐる
ピンでも外れて服の中に落ちたのか
その場でピョンピョンと飛んで見るが何も落ちて来ない
− 唄が聞こえて来た
♪
…哀しみに回るのは、ただ
土で出来た小鳥だけ…
水に描いた絵を持って
貴女と共に結ぼう…
そして炎は燃えるよ
氷の群青の中で……♪
吟遊詩人が好んで唄う
流行りの恋の流行歌なのか
その歌に導かれ、その群れの中に
近付いて行こうとしたのは
ルビナだけでは無かった
正装し
手に小さな包みを携えたアクアスも
瞳を見開いて唄に聞き入っていた
「この歌…
ジークも居なくなる前歌ってた…」