空の表紙 −天上のエクレシア−



――――――――白馬に乗り
ルビナとフリート隊長は行ってしまった



「アクアス!」

「…親方」

取り残された彼の傍に
汗をかき、腕まくりしながら
ギンが近寄って来た


「ちょっと向こうで
喧嘩起きてるらしくてな
いってくるわ!」

「あ〜…。うん」


(そういう仲裁は
親方みたいな人が適任だな。…うむ

アクアスはそれを見送り
なんとなく防空壕にまた戻る

人々は疲労の為と
今は落ち着いた振動に
少し安心したのか眠っていた

(…剣士として…
やる事ないし…俺も寝てよかな…
しかしフリート隊長は
何をやってるんだ…
隊長が指示していかなきゃ
何も出来ないじゃん…
俺、配置所書いて無かったんだし…。

…てか今軍の統制どうなってるんだ…?
もしかして智天士長とかと
連絡取合えなくて動けないのかな…。
あ。このまま寝たら鎧が汚れる…。




――――――外から荷車の音


「皆さーん!
食料と武器を
持って来ましたよー!」

防空壕の扉がバーンと開き
ガラガラと音がする
人々は歓声を挙げてそこに集まった


アクアスは独り
一番奥の木箱の裏で眠っていたが
それに驚いて飛び起きる

食料を配るのはマナ
武器を男達に渡し
使い方を説明しているのは
あの踊り子だ

のっそりと
目を擦りながら出て来た
アクアスを見て
今度は二人が声を上げる


「何してるんです?!
アクアスさん!
もしかして御怪我を?!」


「…いや。
指示待ちだ
これいいかな。美味そうだ。」



「…指示待ち?」

「ああ。
俺は軍の人間だからな
…上の指示が無ければ動けん」

「って今
普通の状況じゃないんですよ?
そんな事言ってたら…
しかも軍なんて今
機能してないんです!
だからこうやって私共が…」

「ご苦労。」

「!!」


その言葉に弾かれる様に
マナはアクアスの頬を叩いた





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