空の表紙 −天上のエクレシア−
「…この方は目を離すと
何をするか解りませんから」
(居なくなった時がチャンス!と
ルビナは思ったが
フリートはそれを見透かした様に
くるりと振り返るとこう言った
「大人しくなさっていて下さいね
…でないとアクアスが大変な事になる」
ルビナは歩き出すフリートの後を
小走りに追う
「!! 何したの?!」
「…鎧に仕掛けをね」
「な!
じゃあアクアスが何かで気が付いて
ここにアタシ捜しに来たら
アンタ達だってヤバいんじゃないの!?」
「…その心配は無い。
あの子は
『格好悪い事はしたくない気持ち』が
非常に強い
今朝の門での布石でかなり
ダメージを受けている筈ですから
特にね
ゆえに先々の事を考え過ぎて
その迷宮に入ったら
抜け出すのにひと苦労だ
今、
きっと『動かない事が最善』と
理由を付けて
フテ寝でも決め込んでいる。
幼馴染みの貴女なら
納得お出来では無いかな?」
「う…で、
でも確かにそゆトコはあるけど!!
公園でアタシ達助けてくれたよ?!
そゆトコだってキチンとあ…」
「誤解しないで下さいね
私はアクアスを好いて居ます
不器用だが
素直でまっすぐな男だ
『騎士』たる素質を持っている
でももうすぐです…
彼が今の彼そのままに
生きていてもいい世界になる…」
フリートが剣で地を指し
輪を描いていたが
暗闇からの
幾つかの足音に気が付いて
手を止める
薄暗い青の光の中に
―――ガラが立っていた
「……ファルケン」
そう呼び掛けられるとフリートは
今まで見た事の無い
柔らかい表情で彼女を見つめ
優しく 微笑んだ