空の表紙 −天上のエクレシア−
「ファルケン…
…お、お前どうして…
弟王に脅されたのか?!」
「……されていませんよ
彼は愚かですが、本来卑劣では無い
だから私の望みを叶えるには
彼に近付くのが最適だっただけです
ここの所『本』の意識が
彼と同化していて
かなり我が儘にはなっていますが…
…丁度いい。
ガラは唄う準備を
私は石を持って参ります
…余計な事をなされると
…宜しいですね?」
フリートは擦れ違いざまジークに目をやる
「…ロルカを
闇兵に引き込んだのはお前か…?」
睨むノアールを見やるフリート
「…他の子供は
記憶を失っていましたが
あの少女には若干残っていた
『会いたいなら』と誘いました
最近はだいぶ染まって
闇兵の仕事も楽しい様ですよ?
ふふふ」
「っ…!てめえ!!」
「人とはそういうものですよ
そうやって日常に沈み
善悪を考えず楽な方へと流れる
…そうやって長い平和が続いて
我々騎士の生き様や崇高な思想も
御題目だけ残り誠は消え…
そんな日がいつか来る
確実にこの世界はそこへと進んでいる
…とにかく…ガラ
貴女が私を覚えてくれていたのが
…本当にうれしい」
「……当たり前だ」
ガラはフリートを
辛そうな切ない灰色の目で
強く見つめた