空の表紙 −天上のエクレシア−
―……悔しいとか
悲しいとか、嫉妬とか、
その全部でもあり
どれでも無い感情が
いつしかアクアスを号泣させていた
一番近い物を挙げるなら
『無力感』
マナは言葉をかける
「…では『弟』でも無く
『軍人』としてでも無く
『アクアス』がやりたい事
やった事は無いんです?」
アクアスは突っ伏したまま首を振る
「あは…
考えてみりゃいつでも
兄貴のトレースだ…
軍の中でさえ
兄代わりの様なフリート隊長に
助けられ
今…独りとなったら…このザマだ…」
アクアスの震える背中に手を置くと
マナは言った
「―あるじゃないです?
『アクアス』が誰に言われるでも無く
命令でも無く走った事が」
アクアスが土に塗られた
ドロドロの顔を
不思議そうに上げる