空の表紙 −天上のエクレシア−
「ふむ。
わたくし共の婚礼参列者は
これだけか
…まあ事情が事情だからな
しかし何でピッキーノ
…いや、我が王は何故こんな場所
で寝ておるのだ。仕方の無い奴だ。
…ほら!起きろ!
フリートもほら手伝え!!」
イザベラはピッキーノの頬を
軽くはたくが起きる気配は無い
「…それをこちらに渡せ…!
…そして男爵の娘風情に
『フリート』などと呼ばれる
覚えも無い…」
イザベラは困った様に笑ったが
顔は少し誇らしげだ
「むう
しかしわたくしは
今日から王妃だぞ?
そなたはピッキーノの家来…
言わばわたくしの下僕
こう呼ぶのは
当然しごくと思うのだが……。
っひ?!」
フリートは剣先を
イザベラの鼻先に向ける
「…石のせいだな
そのふざけた言動は
直に石を持ち続けると
己の妄想に囚われる」
「…無礼なのはどちらだフリート!
いくらお前でも
王妃たるわたくしに
切っ先を向けるなどと…っ!
ピッキーノ!ピッキーノ!!
起きてくれ!
フリートが乱心した!!
そこの者達も
何ボーっとしておるのだ!
早く奴を捕り押さえろ!!」
「…怖ぇ…」
ノアールは腕のバングルを強く握る
フリートは剣の先をゆっくりと回し
イザベラとは反対方向を指し示し
微笑した
「…ほらイザベラ…
真の王妃ならあそこにいる
彼女を望んで…
ピッキーノの異形化は進んだ
彼の世界では
彼は無敵の勇者だ
姫の前での
永遠の勇者である為に
ピッキーノは素晴らしい世界を
作り続けてくれるだろう…」
「あ、アタシ?!」
うろたえるルビナに
イザベラが
不思議そうな表情で近付く