空の表紙 −天上のエクレシア−



―祭壇前の壁を見ると―



壁があった筈の場所は
青い水が満ちていた

そこから水が溢れ出して
自分達の足元を流れて行く



「…え……海…?」

表面は波立って
段差で倒れたままのピッキーノに
飛沫がかかった


水かさはどんどん増して行って
ルビナはとっさに
オデッセイにしがみつく



海の中の世界になってしまった神殿

雲間からの様に光が射して
見た事の無い様な沢山の
鮮やかな魚が周りを泳ぎ

不思議な事に、自分達も
呼吸が出来た


赤い魚の群れが通過した奥から
キュキュ…と鳴く大きな青い魚が
こちらに向かって泳いで来る



「……!!」

フリートを抑えたままの
アクアスやノアールは
咄嗟に体を下げる


巨大な魚は

尾ビレを大きく震わすと
青い光となって
ガラの中へ吸い込まれてしまった


彼女の体に
扉にあった様な
格子模様の光が走り
一瞬、深く目を瞑ったが

ゆっくりと、キツい目を見開く



瞬間。

海の水が勢い良く流れ出し

――そこは草原に変わった

ザザー…と流れ退く海水に
見え隠れしながら
ガラが前へと進む


辺りはすっかりと水が引いて

代わりに

広大な、白い綿穂の波が
風に鳴らされ揺れている


―――高く、青い空




そして空中に『本』が 


くるくると回りながら
浮かんでいた。





< 168 / 227 >

この作品をシェア

pagetop