空の表紙 −天上のエクレシア−
その『本』は
ピッキーノの寝息と同じ早さで
発光しているのが解った
それがなければ
空の景色と紛れて
見つけるのは難しいのではと思う
ガラが本に近寄った時
フリートが身をもがいた
「ガラ…!」
「うお!!」
慌ててノアールがベルトを抜いて
腕を縛った
「アクアスさん!あんたのもくれ。
足縛る。」
「あ…うん…」
四肢を封じられ背中に乗られ、
フリートは髪を地面に乱して
俯せのまま
―やはりアクアスは気が咎めた
皆、沈黙している
風の音だけ響く中
ガラが両手を広げ口を開いた
―唄―
低く、高く
澄んだ響きが空間を満たす
…回るのは土の小鳥…
水に描いた絵を持って線で結ぶ
…そして炎は燃えるよ
氷の群青の中で……
―オデッセイがあの時
水溜まりに映る自分を見ながら
洞窟の中で遠く聞いた唄
十二羽の鳥に支えられた土壺の水盤
それの鳥が
唄と共に廻りだす
中の水が波紋を描くと輪になり
空中に浮かぶ
土だった筈の鳥達は動きだし
羽ばたいて、光の輪を持ち
頭上に広げた
輪からキラキラと
光の粒が、氷の様に
シャラシャラと音を立てて
降り積もる
「…う…わあ……!」
ルビナが立上がり、それに魅入る。
降って来た光を取ると、
それは雪の結晶の形をしていた
「……綺麗……」
―が。
「…うぁ?!」
ふいにオデッセイが
胸を抑えて、よろめく
ジークが膝をつき
ノアールが頭を両手で抱え
苦しみだした