空の表紙 −天上のエクレシア−


―――――――透明で 


静かな暗闇の中
ルビナは体を起こした


(今の景色なんだったんだろ…
船酔い…
したみたいになってる…


暗闇の中で
ゆっくり立上がり辺りを見回した


―ピッキーノ、ジーク、アクアス、ユピ…


その他にも
十戒に了承した為
ここに来てしまったであろう人々が
皆、光の玉の中で眠っている



(…オデッセイさんはどこだろう…。

酷く疲れる

額の汗を拭おうとしたら
誰かに肘が当たった

「!!ごめなさ…!」

「おわ!お嬢さん!?
アンタ何で動けるのさ?!」

「へ…?…ぉえええ!」

ルビナは口元を押さえて真っ青になり
よろけて膝を付いた

「『空間酔い』か
大丈夫
いろんなモンみちまったかしれないが
ここから出たら忘れる
少し辛抱しといとくれよ」


―そう言って
ガラは前を通過しようとしたが
ルビナは真っ青な顔のまま
ガラにしがみ付く

「ち…ちょーっ!えと…!
何しようとしてるの!?」

「へ?」

「さっき!何か言ってた!!
こ…殺すとかなんとか」

「あはは 例え話さ

ただ…
…時間を巻き戻して、
無かった事にするだけ」


「か…変える…って…
でもそんな事したら
皆に会えなくなるよ?!
『今』が変わっちゃうなんて…!!」

「…好いた男でもいんのかい?」
ガラはニヤリと笑う


「のあ?!そっ!
それだけじゃなくて!!
あわわわ!そうじゃなくてっ

それにアクアスや、ジークや、
サリュや、皆に会った事も
無い事になっちゃう!!」


ガラはゆっくり腰を伸ばすと
上を向いて話を続ける

「人の縁てのは不思議なもんさ

会う奴には絶対会う
好きな奴にも嫌いな奴にも
過去を変えてもアンタは
ピッキーノに会うだろうし
もちろんオデッセイにも会うだろう
…でもこんな形には成らない

させない。

…唄歌いにたったひとつ
出来る事

『謳い変え』
『本の無い世界』を書き込むんだ
…本がなきゃ事は起こらない。
皆 力を求めて狂ったりもしない」

「だから!
あなたはどうなっちゃうの?!」


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