空の表紙 −天上のエクレシア−


―――――小さなノアールは
夕暮れの草原に立って居た

幾人もの子供達が
麦の穂に見え隠れしながら
こちらを見ている


「おーい!暇なら遊ぼうぜ!!」

手を振るが
皆ただこちらを見つめ
夕日に照らされながら
首を横に振る


「…んだよ。
夏休みだってのにノリ悪ぃな。」


『君は帰らないといけない。』


「は?」

『まだやり残してること
沢山あるよ。』


ふと考える。



「………ああ…そっか…」


納得した瞬間
体が今のノアールに戻った

「…でも…でもよ。
もう正直めんどくせえよ…。
だってよ!
俺はただ虫捕り行っただけなんだぜ…?」



『―あの子の事はどうするの…?』

「あ?」



『―キミが本当に守りたかった
小さな女の子
…キミを探して泣いてるよ』



―耳を澄ます。


風に混じって
泣きながら自分を探す声

高い草に隠れて
光がゆらゆら見え隠れする




―――向こうは崖だ。


「うわロルカ!!
そっち行くな!!
あぶねえぞ馬鹿野郎!」





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