空の表紙 −天上のエクレシア−
―――そこだけセピアの
奇妙な空間
村の一番奥の
テントじゃなくて、
大きな丸太作りの家
暖炉がある
その前に座っているのは
年季の入った渋い鎧を着けた
男性二人
一人は
美しい銀髪の少年を抱いていたが
床に降ろす
もう一人の
ただならぬ空気を持つ男と共に
何やら笑いながら
酋長の様な男も肩を組み合って
長い簾奥の部屋へ入る
――少年は取り残されたまま
炎を見つめる
すると
酋長と同じ様ななりをした少女が
黙って入って来る
しばし少年を見つめると
いきなり服を脱がしにかかった
(ひー?!
慌てて隠れようとするが
目の前に俺は居たのに
素通りされた……
どうも自分は見えないらしい
「…ありがとう。ガラ。
熱くて苦しかったんだ。
私はファルケン・D・フリート
…さっきは本当にありがとう
『本』の中…
信じられない程楽しかった!」
(フリート…?!…え!?
灰色の髪を
幾つものみつ編みにした
少年より少し年上に見受けられる少女
それに答えて一瞬にこりとするが
…話をしない
黙って横に座っている
「何か話をしようよ。君の話
いつから歌を唄ってるの?」
…少女は困った顔をして
再度、首を振る
「え…さっきはあんなに
綺麗に歌ってたじゃない
普通にはな……」
俯くガラに再度言葉を掛ける
「…もしかして…
『唄』しか歌えないの…?!
…話 したらいけない決まりなの?」
――ガラは黙って頷いた
少年は一瞬絶句したが
また言葉を続ける
「なぜ……」
フリートは、
それにも答えられないのも解ると
少し考え込む
「……話せないとさ
友達出来ないよ」
「………」
少女は黙っている
―何かを思いついたのか
少年はスウッと、息を吸った
歌を唄い出す
「これね
ともだちのうたっていうの
一緒に歌うと、皆友達なんだよ」
そして
少女はそれを覚えたのか
一緒に唄い
少年も楽しそうに声を揃えた
―――そして場面は暗転する