空の表紙 −天上のエクレシア−


『…なるほどな…
ここはフリートの記憶の中らしい』

いきなりの足元からの声に
アクアスは、ぎょっとなる

「兄貴!!」

体を木に横たえ
『おう』と手を挙げる
体中満身創痍だ


『あの後暫く…
城の秘密図書で
この民族の事を調べた…

謎が多くて苦労したが…
少しだけ解った事は

部族が住む土地には
害獣が多く、肥沃な土地でも無い
それなのに村人全員、宝飾品を身につけ
外にも出て行かず
貴族並…それ以上の
豊かな生活をしていたのは
何故なのか

……金を貰ってたんだ
『本』の中で
代々、王族や
裕福な者だけを遊ばせた
それはおかしな事では無い
需要と供給


…ただ、『唄う子供』には
一切会話を禁止する掟があった

そして死ぬまで
集落の外には出さない

誰かと会話して
心を通じさせるのを防ぐ為に

部族の繁栄の為にだけ永遠に…』


「兄貴、黙れって!!」

話す度に
体中の裂傷から血が吹き出す


『…俺の知っているフリートは
ただ騎士然としたいが為だけに
あんな風になる奴じゃない…
だから不思議に思っていた…』


「解ってる!
俺だってフリート隊長を…
あ〜…兄貴!!
いいからおぶされ!!」


『やだ』


「!!やだじゃねーよっ!!

…頼むから!!お願いだから!!
…俺には術も使えない!
白兎みたいに治癒能力もない…!!
斬られる前なら助太刀出来ても
……今はこれしか俺には出来ないんだ!!!」


―アクアスは
自分の二倍はある体をおぶって
ゆっくり歩き出した





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