空の表紙 −天上のエクレシア−




「…ふははは!!

これは渡さないぞ…。
ルビナは初めて私の話に
嫌な顔ひとつせず聞いてくれた
相手なんだ…。
なんでもニコニコと
聞いてくれた相手なんだ…。
しかもたまに怒ってくれるんだ
…ふふふふっ

…さあ唄え!!ガラ!!
もう他の奴等などどうでもいい…!

結果ルビナと俺が残ればいいんだ!!
『ルビナとピッキーノ二人だけの世界』を唄え!」


片腕を押さえながらも
階段を昇って来たオデッセイが焦る
『…まさか』

「え?」


ガラは固められた腕の下から
だらりと頭を垂れた

『…ガラ……?』

「ひいっ?!」

ルビナが口元を押さえて叫ぶ



ピッキーノが
動かなくなったガラをガタガタ振る

「…あれ…?
静かになっちゃった。
さっき攻撃したせいかな。
まあいいな。
また買えばいいし。

俺、物は大切にする方だけど
これ操作性悪かったし
…おや?
フリート。
こんな所で待っていたのか。」



螺旋のてっぺんが切れた場所

白い雲がうねりながら
見えない地面を進んで行く

それが行き過ぎると
砂の大地なのがわかった

そこはどこまでも青空で
光る『本』だけが浮いて居る


その果てしない空間に
フリートが独り、立っていた



――瞳は真紅に染まり
銀の鎧を突き抜け、白い翼が
何枚も生えている

所々、骨が剥き出しになり
肉がちぎれ、
銀の髪はジークと自分両方なのか
血に赤黒く染まり、
風になびく事は無かった



「おお!!
丁度いいぞフリート!!
お前集落に行って誰か連れて来い!」


『――…なぜです…?』


「いや、どうしてって言われてもなあ。
この『キカイ』じゃなくても
まあ、最初に、
兄者にこれが人間じゃないって
聞いた時は、面白いと思ったけど
もう動かないし。
それに集落の女は皆、
歌詞くらい覚えてるだろう?
歌えりゃ誰でも構わ……」



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