空の表紙 −天上のエクレシア−
「ルビナ!
マドゥー様御注文の
花束は出来たかー?!」
太い首を汗だくにし
花挿し桶を細工する親方
その声に
色取りどりの花の間から
赤毛の人懐こい笑顔が飛び出した
「はい!ギン親分!」
少し古ぼけた赤い服の裾を翻し
小さく「どっこいしょ!」と
声を上げて
50本は有ると思われる赤い薔薇の束を
細い腕で、手際良く紙に包む
店の軒先に停めて置いたロバを
口笛で呼び軽く撫でた後、
手綱を支えに馬車の荷台に飛び乗った
「んじゃ
ちょっくら行ってきまーす!」
「おー!気を付けて行けよー!」
店の奥で丸めた博打本を読んでいた
親方の古い友人が声をかける。
「平気か?あの子。
マドゥー家ってなぁ…
周囲の噂が良くないぜ」
「ん?!だーいじょぶ!
あの辺りは道中、森しかないが
今は、まっ昼間だ!
もう何回も行ってるし
あんな目立つ屋敷だ
ロバが道覚えてるしな」
友人は軽く方眉を上げながら
「俺が言いたかった事は
違うんだけどな。」
とでも言いたげに、
また姿勢を崩し本に目を戻した
煤けた石畳と
レンガの町並み
道を隔てて赤ん坊の声が響く
窓と窓の間を繋ぐ麻紐に
幾枚もの木綿の白茶けた布
そして
それを見下すかの様に
赤のビロードに金シャラを縁取った
「建国祭」の赤い文字が、
建ち並ぶ外燈の下に
ひるがえっていた
町は
その祭の準備でごった返している
マドゥー様御注文の
花束は出来たかー?!」
太い首を汗だくにし
花挿し桶を細工する親方
その声に
色取りどりの花の間から
赤毛の人懐こい笑顔が飛び出した
「はい!ギン親分!」
少し古ぼけた赤い服の裾を翻し
小さく「どっこいしょ!」と
声を上げて
50本は有ると思われる赤い薔薇の束を
細い腕で、手際良く紙に包む
店の軒先に停めて置いたロバを
口笛で呼び軽く撫でた後、
手綱を支えに馬車の荷台に飛び乗った
「んじゃ
ちょっくら行ってきまーす!」
「おー!気を付けて行けよー!」
店の奥で丸めた博打本を読んでいた
親方の古い友人が声をかける。
「平気か?あの子。
マドゥー家ってなぁ…
周囲の噂が良くないぜ」
「ん?!だーいじょぶ!
あの辺りは道中、森しかないが
今は、まっ昼間だ!
もう何回も行ってるし
あんな目立つ屋敷だ
ロバが道覚えてるしな」
友人は軽く方眉を上げながら
「俺が言いたかった事は
違うんだけどな。」
とでも言いたげに、
また姿勢を崩し本に目を戻した
煤けた石畳と
レンガの町並み
道を隔てて赤ん坊の声が響く
窓と窓の間を繋ぐ麻紐に
幾枚もの木綿の白茶けた布
そして
それを見下すかの様に
赤のビロードに金シャラを縁取った
「建国祭」の赤い文字が、
建ち並ぶ外燈の下に
ひるがえっていた
町は
その祭の準備でごった返している