空の表紙 −天上のエクレシア−
弾かれた様にオデッセイが
二人を抱き抱え横に飛ぶ
あっけに取られる隙も無い速さで
今まで居た場所が瓦礫に埋まった
「あ…ありがと…」
オデッセイは
その声が聞こえないかの様に
ある一点を凝視して居た
崩れた瓦礫は
天井の物だった様で
暗闇に長い光が
一本、射していた
オデッセイが見た先
そこには
―――粉々に砕け散った
青い石が散らばって居た
オデッセイはゆるりと動き
周囲に碧く発光するドームを張ると
そのかけら達に向かって
歩き出した
「…これでもう
扉は誰に開けられない…
力も戻せない…か。」
指先を血だらけにして
その一つ一つを拾い
両手に広げる
しかし次の瞬間
それを両手で思い切り
握り締めた
「!!やめて!!」
「…怪我するから離れロ゛」
「もうしてるよ!!」
ぼろぼろと涙を流しながら
オデッセイにすがり着くルビナ
「……『姫の涙で
野獣の魔法は溶ける』…なんてこたねえか」
「え…」
「じゃあ 俺行くね」
「行くって…」
オデッセイはその顔を暫し見つめ
ルビナの手を取ろうとしたが
鍵爪化した手が光に照らされると
スッと自分の背中に帰した
―そして
全身の毛を逆立てて
人の姿を全て捨てる
ガッと
ルビナに顔を近付け
威嚇の雄叫びを挙げると
空高く飛びそのまま消えた