空の表紙 −天上のエクレシア−



下町から表通りに出ると
まっすぐに町を見渡せる
城下町の大通りで
少し傾斜してスピードの出るこの道が
ルビナのお気に入りだった


車輪の音が変わる。
門前は侵入者に
かなり破壊されてしまって
街の人間総出で、修理をした


速度を落し、
白い木綿のエプロンから
汗を拭く為のハンカチを出す

「ふぃー!さすがに今日は
あっちいなあ!
でも祭り!稼ぎ時!
頑張らないとね!」


「おはよう!」


ふいに掛けられた、聞き覚えた
いつもの声。

思いきり振返ると
細身な青銅の鎧に黒髪の青年


言葉の語尾に幼さが残ってはいるが
その瞳は以前よりも
しっかりとした輝きになった



「アクアス!」

青年は照れ臭そうに笑うと
「あ〜…」と一呼吸置いてから
言葉を続けた

「…ルビナ
マドゥー邸に行くのか?」

「ん…。お見舞いにね
―アクアスも軍に戻ったんだ」


アクアスは腰の剣を
ポンポンと叩きながら

「あ〜…。うん。
結局俺、これしかやって来てないし…
また門番からだけど…
やりながら色々
自分のやりたい事探してくよ」


「…うん!
仕事なめんなよ!お互い頑張ろーぜ!」

ルビナはニッコリ笑うと
手を振って、また走り出した


「お。
今日もルビナは元気に仕事か!」

門の詰め所から
巨体の坊主がゆっくり出て来る





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