空の表紙 −天上のエクレシア−


下町から表通りに出ると
まっすぐに町を見渡せる


城下町の大通りで、
少し傾斜してスピードの出るこの道が
ルビナのお気に入りだった



目には見えない
小さなひっかき傷が
その風に当たっている間は
少し和らぐ様な気がしたからだ


− 不満があるわけじゃない。

父と二人の幼い弟
自分が働くのは当然の事だ




――数年前


どこかの町に大爆発が起きて
皆、敵国の仕業と思い込み
それが火種になり、各地で戦争が起きた


この国は壊滅までは至らなかったが
当時の王族は皆殺になり、
前国王の複弟と、その子供達が
大臣達を伴い
新しい建国を行ったのだった


それ以上の事を
移民のルビナは良く知らなかったし
興味も無い


その手の話になると
町の皆も表情が変わり
言葉から悪意が流れだす


それを見ているのは嫌だったし

いつも門を通るたび
花を一本づつ買ってくれる、
馴染みの兵隊さん達を
犬呼ばわりされるのも嫌だった




車輪の音が変わる。

門前は侵入者が、た易く出入り出来ない為と、
音でそれを察知出来る様に
特別な石の並びになっていた



速度を落し、白い木綿のエプロンから
通航証を出す。



「おはよう!」


ふいに掛けられた声に
聞き覚えた懐かしさがあった





< 3 / 227 >

この作品をシェア

pagetop